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有機酪農のいま

小池 竜一 さん(別海ウェルネスファーム) 有機JAS認証の仕事~有機飼料~

小池 竜一 さん(別海ウェルネスファーム) 有機JAS認証の仕事~有機飼料~
もくじ

オーガニック生乳を提供してくれる牛のえさとなる「有機飼料」。有機飼料で有機JAS認証を取得している別海ウェルネスファームの小池竜一さんに「有機JAS認証の仕事」を伺いました。小池さんは、別海ウェルネスファームに立ち上げメンバーとして参画。それ以来、小池さんは有機JAS認証の取得に尽力されました。別海ウェルネスファームでは、2018年の酪農事業の立ち上げに際して、「まず有機飼料作りから取り掛かった」といいます。

なぜ有機飼料作りに取り組むのか?

有機JASの規定によれば、オーガニック生乳を提供してくれる牛に対して、他から購入した有機飼料を与えることも可能です。また、有機飼料は人間が食べる有機の野菜(有機農産物)と同様、認証取得前に農薬など使用せずに2年以上管理する必要があります。 

なぜ別海ウェルネスファームは自分たちで有機飼料を作ることにしたのでしょうか?「“有機”であることに加えて“循環型酪農”、すなわち、“循環型有機酪農 ”が私たちの牧場が目指す姿」と語る小池さん。だからこそ、「自分たちの牛のえさは、牛ふんからできたたい肥など、可能な限り 自然の力を活用して自分たちで育てたい」と考え、有機飼料作りを決めたといいます。



有機飼料作りの難しさ

しかし、飼料の有機JAS認証取得までの道のりは「苦難の連続だった」と小池さんは振り返ります。有機JASの規定 によれば、有機飼料を作る畑の区画を明確化する必要があります。別海ウェルネスファームの畑は広大です。その規模は100ヘクタール、東京ドーム約20個分にも及びます。畑の境界線には車が入ることも出来ません。「牧場のメンバー総出で自分達の足で歩き、杭を打ち、ロープを使って境界線を引く作業を行いました。あまりにも広大な畑なので、“本当にこの作業は終わるんだろうか”と心が折れそうになったこともありました」と小池さん。何日もかけてようやく畑の区画が整備できたとのこと。



次はとうもろこし の種まきですが、ここでも困難に直面します。有機の畑・牧草地では、除草剤を使えませんので、雑草との闘いです。初年度では、とうもろこしより雑草が勝ってしまい、思うような収穫が出来ませんでした。小池さんら別海ウェルネスファームのメンバーは、何とか良い方法はないかといろいろなところに出かけてアドバイスを求めました。そして出会ったのが、北海道大学 の先生。先生のアドバイスを受け、ようやく雑草の除草がうまくできるようになったといいます。

どのようにして雑草に勝つのか?「除草剤を使えない中、とうもろこしの種をまいた後の丁寧な除草作業が何よりも重要です。狭い畦の間をトラクターでズレることなく除草するため、少しでも気を抜くと雑草だけでなくとうもろこしまで傷つけてしまうことになります。除草のタイミングや除草機選びなどの試行錯誤を重ねながら、植えたとうもろこしが雑草に負けないように、収穫まで細心の注意を払います」と小池さん。無農薬で飼料を育てることは本当に根気のいる仕事ですね。



そして、別海ウェルネスファームは、ついに2020年12月10日に有機飼料で有機JAS認証を取得。また、そのえさで育った牛たちの有機の生乳(有機畜産物)で2022年12月20日に有機JAS認証を取得しました。

小池さんは、有機JAS認証の取得までの苦労が報われる瞬間があるといいます。それは、「スーパーの店頭でピュアナチュール™オーガニック乳製品が並べられ、自分でその商品を手に取って有機JASマークを見た時」だといいます。「今までの苦労が走馬灯のように蘇りつつも、“有機JAS認証を取得したからこそ、お客様にこの安心安全な 商品を提供できている”ことを本当に誇らしく思います」と小池さん。今まで知らなかった、有機JASマークの裏側にある酪農家の苦労や努力。これからオーガニック乳製品に対する私たちの見方が変わりそうです。



出典:

有機畜産物の生産行程管理者 ハンドブック(農林水産省)

https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/attach/pdf/yuuki-302.pdf